未来を生き抜く子供たちへVol.2:アプリ甲子園2017優勝 西村佳之くん
ITの世界で活躍する人たちからのエール、「未来を生き抜く子供たちへ」
第2回目はなんと高校生です!
アプリ甲子園優勝の話にとどまらず、未来を作っていく後輩たちにメッセージを送ります。
<西村佳之(かいし)くんプロフィール>
全国の中高生によるスマホ向けアプリ開発コンテスト「アプリ甲子園2017」において優勝および総務大臣賞、技術賞を受賞。
現在、慶應義塾湘南藤沢高等部3年。
ふとしたきっかけで作り始めたアプリ
―アプリ甲子園で優勝したアプリ「Nekt」について教えて下さい
プロフィールを作って、自分の暇な日をカレンダーに登録すると、友達同士で遊べる日がみつかる「スケジュール共有SNSアプリ」です。
Snapchatで友達同士が遊ぶ約束をしているのをみて「俺も遊べるのにー」と思っていたのがきっかけで、今まで作ってきたアプリを改修しながら、構想から半年弱で完成しました。
―技術的に難しくなかった?
全ての機能が難しかったです。
オリジナルアプリを作ったのは初めてで、何回も作り直しました。
―今回優勝できたポイントはどんな所だと思う?
正直わかりませんが、SNSという今までと違ったカテゴリーだったからではないでしょうか。
あと、Appleストアに出す頃からアプリ甲子園にも出すイメージはあったので、ある程度機能が伴ってきたタイミングで友達にFacebookで「使って!」と投稿して利用者を増やしました。
―優勝して周りの反響は変わった?
アプリ甲子園で優勝してから多少ゆるんできていますが、母親からは「まずは成績だから勉強しなさい」ということは変わらないですね。
優勝を知っている友達からは「そんなにすごかったの」「やばい」と驚かれました。
ちなみに、モテるのとは関係ないみたいです(笑)
帰り道のバスでもプログラミング
―ちなみにプログラミングを始めたのはいつ頃?
プログラミングに興味を持ち始めたのが2年前の高1で、その頃はHTMLでWebサイトが書ける程度の知識でした。
―最初からプログラミングは楽しめた?
プログラミングは、辛いこともあるけど、楽しいから続いてますね。
他のことをやりたい時もありますが、辞めたいと思ったことは一度もないです。
本当にハマっている時は、昼休みや帰り道のバスでプログラミングしていることもあります。
でも、マルチタスクが得意ではないので、1日1個と決めていて、「今日は本を読む日」と決めたらプログラミングはしません、というかできません(笑)
―プログラミングが上達するコツは?
小学生の子たちが「Scratch」の先に行こうとするなら、写経がぶっちゃけ一番早いんじゃないかなと思います。
コピペせずに書いていれば、ジワジワとわかる時がくると思いますね。
海外と日本の違いを実感
―話は変わるけど、小さい頃はどんな子だったの?
家電でわからないことがあれば家族で一番詳しかったですけど、特に理系家系でもないです。
小学校の頃は公文やアトリエ、サッカーを習っていました。
小5から中3までは、親の転勤でアメリカのニューヨークにいたのですが、国が変わると、周りの世界全てが変わって見えましたね。
たとえば、日本の小学校では宿題で一度も困ることもなく、テストで点数が取れていればよかったです。
一方、アメリカでは自分のやりたいこと、好きなことを見つけて突き詰めることにみんな専念していました。
僕は幼稚園からサッカーをやっていたのでサッカーをずっとしていました。
―海外はIT関連の授業も進んでいるよね
2010年の時点で、電子黒板なんですよ。
Windowsのプロジェクタをスクリーンに投影して、今でいうGoogleドライブのようなものを後からシェアされました。
プログラミングも好きでやっている小中高生が当時からたくさんいました。
研究のお金もでていたりします。日本もまずはテストの点数と言うより、やりたいことに専念できる環境があってもいいかもしれません。
―英語ができて得することはある?
プログラミングにおいては、開発のドキュメントは英語でも読めるので、その点はよかったと思います。
エラーコードもまずは原文のまま読んでいます。
会話や本を原文で読むのに英語が大事だと思いますが、最初から難しいことができる必要もないんじゃないですかね。
僕も難しい単語の多いニュースは読むのに時間がかかったり、正しいニュアンスが掴めなかったりするので、これからもう少し勉強したいです。
プログラミングは当然で、それ以外の軸もこれから大切
―よくものごとについて客観的に考えているよね
アメリカにいた頃の話に戻りますが、学校ではアメリカだけど、家の中は日本なんですよ。
そんな時、それぞれの生活で「違う自分がいる」ことを客観的にみている自分がいたんですよ。
もしかしたら、そこからですかね。
―憧れている大人とかはいる?
影響力のある人が好きです。スティーブ・ジョブズ、孫正義、一緒に講演できた落合陽一さんも好きです。
自分の道を突き詰める人が好きなので、それでいうと、本田圭佑の「成功に囚われるな!成長に囚われろ!」という言葉が好きですね。
―そんななかで同世代に感じることはある?
もっと頑張ってよと(笑)
みんな僕なんかよりすごいポテンシャルを持ってるはずなのに、自分で可能性を狭めているというか。
たとえば、学年でプログラミングをしている人も3人位しかいない。
今や小学生もプログラミングをしているし、逆にプログラミングをしている人もプログラミングは当たり前なんだから、それ以外の軸も作らなければいけない。
考えている人がどれ位いるのか…。気づいても行動している人はどれ位いるのか…。
「いい大学、いい会社」という考えが僕の周りにも多いけど、テストの点数を気にしすぎというか。
学校の評価や言われたことができることはもちろん大切だけど、それだけで人の価値を勝手に決めている人には「それは違うでしょ」と思ってしまいます。
当事者意識を持って、自分の理想とする世界を作ることに少しでも力を注いでほしいです。
―どんなことに興味ある?
大学では「バイオ」をやりたいです。
コンピュータを超えるものが唯一あるとしたらバイオだと考えています。
日本の中でもかなり大きな研究室があるようなので楽しみです。
プログラミングも好きですけど、人工知能の計算が発達したら人間の遺伝子の研究も急速で発展すると思います。
さいごに
―10年後のイメージはある?
今でいうAR、VRのような最先端の技術で大きなものを作りたいです。
アップルやマイクロソフトのような引っ張っていく側になりたいです。
「すごい奴らと戦いたい」というハングリー精神が強いのかもしれません。
―かいし君にとってプログラミングとは?
一言でいえないのが難しいですね。
プログラミングはやりたいことを形にできる自己実現の1手段。
そして、大企業でも個人でもプログラミングは同じ土俵で戦える公平な道具。
パソコンさえあれば始められますからね。
みんなに使ってもらえるのも、今の時代だからですよね。
―最後に今の小学生たちへメッセージをお願いします!
一番影響を受けたのが海外だったので、留学でも何でもいいから海外にいってみて欲しいです。
親目線だと「英語を学ぶ」イメージかもしれないけど、実はそこじゃなくて「異文化」に触れることが重要だと思います。
今まで絶対と信じてきたことに対して、全く違う価値観があることに気づけます。
たとえば何で宗教が大事なのかとか、日本はLGBTに対する価値観もめちゃくちゃ遅れているけど、それは日本のメディアではそもそも話題にすらなりません。
行ってみないとわからないですね。
―ありがとうございました!!
おまけ
かいし君は高校生と思えない位、自分を客観的に語る姿が印象的でした。
その背景にはアメリカと日本生活のギャップを毎日繰り返す中で、考える姿勢が身についたことがわかりました。
それにしてもMacが入った通学カバンは大きいですな。