【イベント報告】KDDI&プロキッズ 聴覚障がい者向けIT教室「次世代インターホンを作ろう!」

2019/04/16 お知らせ 記事

ろう学生とAIを活用した次世代インターホンを開発

こんにちは。レミです。

2019年3月16日・17日の春休み中にKDDI株式会社と共同で、ろう学校の中高生を対象にしたIT教室を開催しました。3年目のイベント開催となる今回は「次世代インターホンを作ろう!」をテーマに2日間取り組みました。

初日はこのイベントをきっかけに大学でITを勉強している山口くんも参加してくれました。
「プログラミングに専攻は関係ない、この2日間を少しでも楽しんでほしい」という話に文系の私も共感しつつ、イベントが始まりました。

身近に抱える問題をプログラミングで解決

IT教室では、ろう学生たちが抱える悩みに対して「自分たちで解決しよう」というのがメインテーマとなります。
今回は「インターホンの音に気づけない」という悩みに対し、みんなで「次世代インターホン」を作ることになりました。

「次世代インターホン」では、インターホンを押した時に、顔認証で人物を判定し、来訪者の名前や写真を自分のスマートフォンへメールで通知してくれます。また、メールに返信することで来訪者が待つインターホンの画面にメッセージを表示でき、口頭での会話が難しい聴覚障がい者がやり取りすることができます。外出中などインターホンにでられないときでも来訪者とやり取りが可能です。

Pythonを使ってプログラミング

まずは、AIでよく使われる「Python」という言語を用いてプログラミングを勉強しました。演算の処理や条件分岐、リストなど基礎的な概念を問題を解きながら理解していきます。だんだん難易度が上がるにつれ、苦戦しつつも全員で一丸となって進めていきます。

ちなみに「Python」は比較的単純なコードで書くことができる言語です。数時間学んだだけでも、慣れてくるとちょっとしたコードは書けるようになります。プログラミングが楽しくなって、昼休みの時間も惜しんで勉強している猛者もいました。


Pythonに触れたことのなかった私も一緒に勉強しました。

情報を正しく伝える難しさを体感しよう

お昼休みの後は一度プログラミングから離れ、アイスブレイクとして「お絵描き伝言ゲーム」を行いました。このコーナーの担当は私が行いました。「野球をする桃太郎」や「プログラミングをする浦島太郎」など今回のイベント+KDDIに関連するややこしいお題を選びました。

KDDIの社員の方も参加し、チーム対抗戦では「聖火リレーをする桃太郎」や「釣りをする浦島太郎」などお題と異なる答えもでてきていました。

「もっと、こう書いておけばよかった」

ゲームが終わってからそんな感想が聞こえてきました。文字も音もなしに正確に次の人に情報を伝えるのは難しいです。プログラミングもパソコンに伝わるようにコードを書かないと、正しい動きをしてくれません。試行錯誤を繰り返しながら、きちんと伝える大切さに気がついてもらえたら嬉しいです。

機械学習とは〜犬と猫のちがい〜

IT教室では、人工知能の特徴の1つである「機械学習」についても学びました。
さて突然ですが、犬と猫のちがいをコンピュータにどうやって教えるでしょう?

「犬はワン、猫はニャーと鳴くんじゃない?」

人間は鳴き声で犬と猫の区別ができそうですが、コンピュータには音だけだと不十分です。とはいえ、見た目で判別しようとしても、ヒゲや耳の形も似ているのでなかなか説明が難しいですね。正解は、たくさんの犬と猫の写真を記憶させることで、コンピュータが区別できるようにすることです。

これを「機械学習」と呼んでいます。

自分の顔認証をしてみよう

「次世代インターホン」も機械学習と同じ仕組みを使います。その機能は、今回の次世代インターホンを作る上で欠かせない、カメラを使った顔認証です。まずは自分の写真をどんどん撮って、自分の顔をパソコンがうまく画像認識できるか挑戦しました。

「先生、頭が切れて写ってもいいですか?」
「二人写ってしまった場合はどうしましょう?」

きれいに自分の顔がスクリーンに収まらないと、コンピュータはきちんと認識できません。はじめはみんなうまく写真をとることにも苦戦していました。

コツをつかむと400枚近い写真を記憶させる生徒も

生徒同士で顔写真を登録し、自分以外の認識もできるようパソコンに学習させていきます。登録画像をどんどん増やしていくことで、インターホの識別人数も増えていきます。みんなで試行錯誤しながら、顔認証の学習を行っていきました。

大学でのAIやIoTの取組みも学ぼう

開発の途中ではアクティビティとして、名古屋工業大学大学院の打矢先生より「大学でのAIやIoTの取組み」のお話も伺いました。大学の研究生たちはエレベーターが自動で到着するシステムや、Amazonの購入ボタンなど、自分の生活を便利にするIoTシステムを開発しているそうです。自分の悩みを自ら解決する取り組みは、今回のイベントのテーマにも繋がります。他にも3Dキャラクターを使った音声対話システムや災害時の誘導ロボットの研究など、みんな真剣に聞く姿が印象的でした。


今回のAIやIoTは大学の研究にも繋がることがわかりました

AIやIoTを駆使して来訪者を通知

大学での積極的な人工知能やIoTの活用イメージがわかったうえで、「次世代インターホン」の仕上げにとりかかりました。

「次世代インターホン」はAIやIOT(Rasberry Pi)を活用しています。インターホンを押した時に顔認証で人物を判定し、来訪者の名前や顔写真を瞬時に自分のスマートフォンへメールします。

果たして、うまくできるでしょうか?


顔認証ができていることを確認できればいよいよ実機確認です


無事に来訪者の名前がメールで通知されました

AI・IoTを活用した開発を終えて

最後は2グループに分かれて完成発表会を行いました。インターホンの音が聞こえなくてもお互いにやり取りできる様子を実演しました。

「今後も自分の力でプログラミングできるようになりたい」
「今回作った作品を改造していきたい」

その後のプレゼンテーションでは、これからもプログラミングを続けたいという意見が多く聞けました。今回のイベントで使用したRaspberry Pi、カメラ、3.5インチディスプレイなどの開発環境は、イベント終了後も自分たちで継続して開発が続けられるようプレゼントし、今年度のIT教育は幕を閉じました。


デモとプレゼンテーション発表の様子

将来にITの選択肢が増えた

「情報系の大学に進むきっかけになった」
「ITに対する興味が強まった」
「顔認証システムを応用して自分のアバターを作成したい」

終了後のアンケートでは参加満足度100%!生徒の嬉しいコメントも目立ちました。

なにより、このIT教室がきっかけで、情報系の大学に進む生徒さんが2年連続で出たことも非常に胸が熱くなりました。今回のようなろう学校の生徒達へのIT教育を通して、職業の選択肢を増やすきっかけを今後も作っていきたいと考えます。

2日間、お疲れ様でした!